ITパスポート経営戦略

27 技術戦略マネジメント

ITパスポート

 

MOT(Management Of Technology:技術経営)

技術をビジネスに結びつけて経営資源として活かす考え方。

技術者だけでなく経営者も技術の価値を理解して活用することが求められる。

研究開発と経営戦略をつなぐ橋渡しの役割を果たす。

例:新しい材料技術を用いて、製品の性能を差別化し市場を獲得する。

 

技術ポートフォリオ

保有する技術を分類・整理し、将来性や重要性を分析する手法。

「中核技術」「育成技術」「補完技術」などに分けて戦略を立てる。

資源の最適配分や研究開発の方向性決定に役立つ。

例:成長性の高い技術に投資を集中し、古い技術は縮小する。

 

特許戦略

自社の技術を守り、競争優位を築くための特許の活用方法。

攻め(取得・公開)と守り(秘匿・権利行使)のバランスが重要。

他社の特許網を分析し、将来の訴訟リスクを回避することも含む。

例:主要部品に関する特許を多く押さえ、他社の参入を防ぐ。

 

技術予測手法

将来の技術動向を予測するための方法論。

デルファイ法、モーフォロジー分析、ロードマップなどがある。

不確実性の高い未来を見据えて戦略を立てる際に使われる。

例:10年後のエネルギー技術の発展を専門家の意見で予測する。

 

プロセスイノベーション

生産方法や業務手順など、工程に関する革新。

効率化、コスト削減、品質向上などが目的。

既存製品でも工程を変えることで競争力が増す。

例:自動化設備の導入により生産スピードを2倍にする。

 

プロダクトイノベーション

製品そのものに関する革新。

性能、機能、デザインなどが大きく改善される。

新市場の創出や既存顧客の満足度向上につながる。

例:スマートフォンに新たなセンサーを搭載して差別化する。

 

オープンイノベーション

社外の知見や技術を取り入れて新しい価値を創造する手法。

大学、スタートアップ、他企業との連携が活発。

自前主義を捨ててスピードや多様性を確保する。

例:大学との共同研究で新素材を開発し、製品に応用する。

 

魔の川

基礎研究と製品化の間に存在する障壁。

研究は進んでいても、実用化につながらない状態を指す。

技術の社会実装を妨げる最初の難関。

例:実験室では成功しても量産技術が確立せず商品化できない。

 

死の谷

技術開発から事業化への移行段階で生じる資金・組織の壁。

資金不足、人材不足、社内理解の欠如などが主な要因。

ベンチャー企業が直面しやすい問題。

例:試作品までは完成しても、量産のための投資が集まらない。

 

ダーウィンの海

市場に出てから顧客に受け入れられるまでの障壁。

競合や顧客ニーズとのギャップにより失敗するケース。

製品は完成していても売れない・広まらない状態。

例:技術的には優れているが価格が高く、誰も買わなかった。

 

ハッカソン

「ハック(Hack)」+「マラソン(Marathon)」を組み合わせた言葉。

限られた時間内にチームでアイデアを出し合い、アプリやサービスなどの試作品を開発するイベント。

技術革新や人材育成、オープンイノベーションのきっかけになる。

例:週末にエンジニアとデザイナーが集まり、新しい防災アプリを作るコンテストを開催。

 

キャズム

新しい製品や技術が「一部の先進的な層」から「一般市場」に広がる際に直面する障壁。

市場が急拡大する前に乗り越えなければならない大きな溝。

ここを超えられないと、その技術は普及しないまま終わる。

例:ARグラスが一部のマニアに人気でも、一般層には使いにくく普及しなかった。

 

イノベーションのジレンマ

成功している企業が、現在の顧客や技術に依存しすぎて、新しい技術に対応できなくなる状態。

革新的な技術は最初は収益が小さいため、既存事業を優先してしまいがち。

結果として、新興企業に市場を奪われる。

例:スマホ時代に対応できなかった老舗の携帯メーカーが市場から姿を消した。

 

デザイン思考

ユーザー視点で問題を発見し、創造的に解決策を生み出す思考法。

共感・定義・発想・試作・検証という5つのステップで進められる。

製品開発だけでなく、サービスや社会課題の解決にも応用される。

例:高齢者の不便さに共感し、使いやすいリモコンを試作して改良を重ねる。

 

ペルソナ法

代表的なユーザー像(=ペルソナ)を設定し、その人物の立場からニーズや行動を想像する手法。

実在しそうな人物を想定して思考することで、リアルなアイデアが生まれやすくなる。

デザイン思考やマーケティングでよく使われる。

例:「70代一人暮らしの女性」などの架空ユーザーを設定して商品を設計する。

 

PoC(Proof of Concept:概念実証)

アイデアや技術の「実現可能性」を確認するための初期段階の検証。

本格開発の前に、小さな実験やプロトタイプを通して有効性を確かめる。

成功すれば次の段階に進み、失敗すれば軌道修正できる。

例:新しいAI技術で病気を予測できるか、少人数の患者データで試す。

 

PoV(Proof of Value:価値実証)

技術や製品が「本当に価値を生むか」を確認するための実証。

ユーザー視点での有用性やニーズへの適合度を検証する。

PoCよりも一歩進んだ段階で、投資判断にも直結する。

例:実際に顧客に使ってもらい、どのくらい課題が改善されたかを測定する。

 

バックキャスティング

将来ありたい姿(理想)を最初に設定し、そこから逆算して現在すべきことを考える思考法。

現状からではなく、ゴールから出発するため、革新的な発想がしやすい。

持続可能性や社会課題の解決を考える際に有効。

例:「30年後に二酸化炭素排出ゼロの社会にするには、今何を始めるべきか」を考える。

 

ビジネスモデルキャンバス

ビジネスの構成要素を9つのブロックに分けて整理するフレームワーク。

「顧客」「価値提案」「チャネル」「収益」「コスト」などを一枚の図にまとめて可視化する。

新規事業の立ち上げや既存事業の見直しに使われる。

例:新しいサブスクサービスの仕組みを図にまとめ、全体像を確認する。

 

リーンスタートアップ

最小限の製品(MVP)を素早く作り、顧客の反応を見ながら改善していく起業手法。

失敗のコストを下げ、柔軟に方向転換できるのが特徴。

不確実性の高いビジネスに向いている。

例:簡単なアプリを先に出し、ユーザーのフィードバックで次の開発内容を決める。

 

APIエコノミー

API(Application Programming Interface)を活用し、他社と機能やデータを連携する経済の形。

自社のサービスを他社が利用できるようにすることで、ビジネスが広がる。

サービス同士がつながることで新たな価値が生まれる。

例:地図APIを利用して、レストラン検索アプリが位置情報と連携する。

 

VC(Venture Capital:ベンチャーキャピタル)

成長性の高いスタートアップ企業に投資する専門会社や投資家。

株式などを引き換えに資金を提供し、企業が上場することで利益を得る。

高リスク・高リターンの投資として知られる。

例:革新的な医療ベンチャーに数千万円を出資して上場を支援する。

 

CVC(Corporate Venture Capital:コーポレートベンチャーキャピタル)

事業会社が自社の戦略的目的のためにスタートアップへ投資する仕組み。

単なる利益目的ではなく、自社技術との連携や新事業の創出が狙い。

大手企業によるオープンイノベーションの一手段として活用される。

例:IT企業がAIベンチャーに出資し、自社サービスと連携させる。

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